このようにデジタル化への移行は避けられないのだが、90年代初めまでアナログ方式のハイビジョン普及を先導していた郵政省としては、微妙に方針を変更したわけだ。
電波監理審議会は行政側に放送のデジタル化について、93年に結論を出すように求めていた。
ところが政府と業界は具体的な議論をしないままで、明確な方針を打ち出せなかった点に問題があった。
デジタル技術発達のスピードを読み違えたことも、対応の遅れをまねいた原因だろう。
それでも94年5月に発足した「マルチメディア時代における放送のあり方に関する懇談会」では、TV放送のデジタル化について積極的な方針を打ち出している。
ただし、デジタル方式だけではなく、アナログ方式のハイビジョン普及も推進するというアナログ/デジタル併存を主張していた。
この懇談会の結論によると、CS放送のデジタル技術が発達することによって2000年には40?50曲に増えると予測していた。
予想以上に放送に関する規制緩和が進んだという点を差し引いても、この時点での技術予測は実際の進歩と大きく違っていたのだ。
予測当時より2年も前の95年の時点で、300曲近くまでCSデジタルのチャンネルが増えてしまうとは......。
予測が間違っていたのか、技術の進歩が速かったのか。
たしかに当時のCS放送は、バブル経済の崩壊も影響して厳しい情況にあった。
それでもデジタル化によって低コストが実現できれば好転すると考えられていたものの、トランスポンダの利用率も低迷していたため、積極的な予測は難しかったようだ。
ちなみに、CS企業の老舗ともいえるJSAT(日本サテライトシテムズ)は「パーフェクTV」の重要な出資者に名を連ねている。
およびCSアナログ放送のスカイポート・グループとCSバーン・グループは98年9月に放送を終え、CSデジタル放送に移行。
スカイポート系の『スター★チャンネル』や『MTV』、『CNN』、およびCSバーン系の『衛星劇場』や『BBCワールド』などは「パーフェクTV」で放送を継続しているし、スカイポート系は「ディレクTV」でも放送している。
CSアナログの加入者がスムーズにデジタルに移行できるように、チューナーの無料提供といったサービスも展開している。
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