2010年8月アーカイブ

2004/08/31

 ドキュメンタリー専門の番組供給会社が快進撃を続けています。国内視聴世帯数は一997年の放送開始から約7年で4百万世帯を突破、その実績をもとに映画会社との連携を始めました。

 拡大路線を突き進むのは、日本のケーブルテレビ局などへ番組供給をしている「ディスカバリー・ジャパン」(東京都新宿区)。自然、科学など5つのジャンルの番組を扱い、視聴世帯数は6月現在で4百3十6万。この一年で5十万世帯も増加した。

 同社のマーケティング&コミュニケーションズ部長、岡崎正哲さん(4一)は、好調な理由についてこう分析する。

 「いくら映像コンテンツ(情報の中身)が増えても、"現実"ほどおもしろいものはない。4百万世帯という実績は、目が肥えた視聴者が増えてきたことを意味するのではないか。事実、(民放キー局やNHKの)地上波放送局でも、ドキュメンタリー番組は視聴率を手堅くとっている」

 同社にとって4百万世帯の突破は、大きな意味をもつ。「メディアとしての存在価値が高まればビジネスの機会が拡大できる」(岡崎さん)からだ。広告媒体として売れるメディアになれば、懸案だった視聴料と並ぶ収益源の柱"広告収入"も増すことができる。

 そんな狙いで力を入れているのが、映画配給会社とのタイアップ企画。9月6日から十日までを「プレミアディスカバリー『アイ,ロボット WEEK』」と位置づけ、同月十8日に日本で公開される米映画「アイ,ロボット」のテーマ"ロボットと未来"について、身近に考えさせてくれる特別番組を5日連続で放送する。

 人間とロボットの共存は現実的に可能なのか?また、共存のルールが破られたとき未来はあるのか?といったテーマを深掘りする内容だ。

 「アイ,ロボット」を配給する20世紀フォックス映画(東京都港区)が、この番組の広告枠で映画の宣伝をする。この連携によって、テレビの視聴者に「アイ,ロボット」を強力にアピールできるのだ。

 20世紀フォックス映画も、「ディスカバリーチャンネルの視聴者は"科学"に関心のある人が多い。映画配給会社として最短のマーケティング・アプローチができる」(宣伝部)としている。

 同様のタイアップ企画は、すでに地球温暖化を警告する話題作「デイ・アフター・トゥモロー」(今年6月公開、20世紀フォックス映画配給)などでも行っており、今回で3回目になる。

 5百万世帯を目標に掲げるディスカバリー・ジャパン。「将来は日本独自の番組も制作したい」という岡崎さんだが、地上デジタル放送やブロードバンド(広帯域)放送など「多チャンネルメディア」が続々と登場、競争が激化している。メディアの存在感をどこまで示せるか、真価が問われるのはこれからだ。
                  ◇

 ■視聴世帯400万を突破 広告収入拡大へ中身で勝負

 ■ディスカバリー・ジャパンCEO 沼田篤良氏

 小さなアリの世界をのぞくと、社会的なルールが存在し多くのドラマが詰まっています。テレビのおもしろさはその"現実"にあると考え、一つ一つのテーマを深掘りしたドキュメンタリー番組を追求。その結果、4百万世帯を突破できました。

 今後の課題は、視聴世帯数の増加と同時に、広告収入をいかに拡大するかです。ただ、その根拠(視聴データ)をどうスポンサーに示すかは、今後の懸案でしょう。

 (激しいチャンネル間競争のなかでの)勝ち残りのカギは、番組を流す手段ではなく、やはり中身です。取材力と企画・資金力、代筆力で裏付けられたコンテンツで勝負します。

2003/08/28

 BS(放送衛星)やCS(通信衛星)放送、CATV(ケーブルテレビ)など有料放送各社が新たなマーケティング手法を始めた。スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)によるサッカーの日韓ワールドカップ(W杯)無料放送が呼び水となり視聴者は急増したが、その後は反動で鈍化した。各社は番組供給会社との連携や地元密着などあの手この手で契約者獲得に動いている。

 「インフラ会社ではなくエンターテインメント会社として営業しないと新規加入者は獲得できない」――。CATV最大手のジュピターテレコム(J―COM、東京・豊島)の森泉知行社長は3月の就任直後、社員に語りかけた。同社のCATV加入者で高速インターネットと電話の新規加入者は2ケタ成長を続ける半面、多チャンネル放送の伸びは横ばい状態。

 打開策としてアニメ「カートゥーン・ネットワーク」を持つジャパン・エンターテインメント・ネットワーク(東京・中央)と組み、同番組のキャラクターをラッピングした宣伝車を都内の営業地域で走らせた。全国各地で展開する販促イベントにも使い、J―COMの加入者獲得と同番組の認知度向上につなげている。

 今月24日には系列7局(約122万世帯)でアニメ番組「キッズステーション」などCS放送の人気チャンネルを12時間、無料放送した。「アンパンマン」など子ども番組を多く放送しファミリー層の加入を促す。

 首都圏を中心に13のCATV局を統括運営するジャパンケーブルネット(JCN、東京・中央)は系列局の営業地域にある地元商店と連携したカード事業で加入者を囲い込む。横浜市港南区などを営業地域とするシーエーティービー港南(横浜市)は8月から多チャンネル放送加入世帯に専用カードを無料配布。加入者は約50の協賛店舗でカードを提示すると特典がある。例えばゴルフ練習場では打席料が半額だ。

 カード事業でCATV局側は加入者を囲い込むと同時に地元企業からの広告出稿を増やせる。提携店舗はCATV局が加入者に配る番組ガイド誌やホームページに無料で店舗の紹介を掲載できる。

 BS放送のWOWOWは急増するブロードバンド(高速大容量)通信加入者を対象に高画質高音質のハイビジョン番組の配信を8月から始めた。BSデジタル放送のハイビジョン番組を見たブロードバンド利用者が新規加入するようなきっかけ作りを狙う。配信するのはスティーブン・スピルバーグ総指揮のテレビドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」。WOWOWの月額500円のブロードバンド通信サービスとして全10話を順次配信する。

 スカパーは昨夏始めた110度CS放送のテコ入れを進めている。BSデジタル放送と同じ東経110度上の衛星を使うため、同じ受信機で両放送を視聴できる。将来性を期待されていたが実際は伸び悩んでいる。10月から広告・宣伝活動を増やすほか、電器店にアンテナ設置のための販売奨励金を支払う。

 CATVや衛星放送に有料番組を供給する番組ソフト会社も新規加入者獲得に動いている。「ディスカバリーチャンネル」など人気番組を持つジュピター・プログラミング(JPC、東京・新宿)は、高級ホテルを狙う。シングル料金3万円以上のホテルは映画やスポーツなどの有料番組を無料で提供するところが増えている。高級ホテル専従のスタッフを置き、同社の番組放映を働きかけている。ホテルで無料視聴した宿泊客が関心を持つようになれば、自宅での有料視聴が期待できる。

 JPC系列のゴルフ専門番組「ゴルフネットワーク」は7月に小学生高学年から高校生までのジュニア層を対象にしたゴルフレッスン番組を始めた。若年層にゴルフの楽しさや正しいマナーなどを紹介し、ゴルフ人口のすそ野を拡大すると同時にゴルフ番組への関心も高める。

 日本の多チャンネル放送普及世帯は3月末で17%前後。業界では「見たいときに見たい番組を見られるビデオ・オン・デマンド(VOD)など新たな視聴方法提供と番組内容の充実で、欧米並みの40%前後まで伸ばせる」(竹岡哲朗JPC社長)とみている。ただ、新規加入者獲得には放送会社のマーケティング活動と並び、番組自体の質的向上が欠かせない。これまで必ずしも視聴者の要望に沿わない番組編成がったり、誹謗中傷対策が不十分だったのも事実。放送会社と番組供給会社が協力し、実際の視聴形態に即した放送時間で、番組会社自らが要望の多いコンテンツ(情報の内容)を制作するなどの対策も必要となりそうだ。

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