携帯電話・PHSの普及・大衆化は、その通信ツールとしての利用のみならず、メディアとしての利用の可能性を開いた。
特に、家庭内のみならず外出先でも利用できる点は、利用場所や機会が固定されている他のメディアより広く、さまざまなニーズ、シチュエーションで使われる点で、これまでのメディアにない有利な点である。
こうした点を背景に、WAPやiモードなど、携帯電話・PHSを使った情報サービスが次々と登場してきている。
これらは、移動中の利用者を対象に、ニュースや天気予報等の情報配信から、交通機関の案内、レストラン・ガイド等の情報提供サービス、チケットの予約・販売などの付加機能サービスまで多岐にわたっている。
表示画面の大きさや、使用できるキー数に制約はあるものの、むしろ、そうした限定条件からシンプルな表示と絞り込まれた操作性により、使いやすく、わかりやすいサービスとなる可能性がある。
また、携帯電話やPHSに接続した携帯パソコン、または内蔵したPDAやカーナビゲーション・システムを対象に、インターネット等を経由して、同様な情報を提供するサービスも先行して行われている。
こうした移動体のメディア(モバイル・メディア)において、もっとも特徴的なサービスとなりうるのが、位置情報の検出と表示、地図データとのリンクである。
携帯端末の位置検出には、GPSを用いるもの、接続しているPHSの基地局とその電波強度から検出する方法など、いくつかの方法が開発されている。
そうして検出した位置情報を、PDAなどの携帯端末上で地図と重ねて表示したり、さらには、周辺のレストラン情報などの地図上のデータベース情報を検索して案内することまで可能となっている。
携帯電話・PHSのもう一つの特徴は、電話やテレビの利用と異なり、個人の利用が特定できる点である。
携帯電話・PHSをメディアとしてみた場合、常にその個人とともにある究極のパーソナル.メディアとしてみることができる。
さらに、ラジオやポケベルと異なり、双方向での情報交換が可能なため、インターネットと同様に情報検索や、その利用動向を把握することも可能である。
通信手段そのものも、新たな開発が進められており、WlCDMAなどの新たな高速通信が実用化されようとしている。
これが実現すると、動画や高速データ通信などが可能となり、携帯型のテレビ電話も可能となる。
そうなると、個人向けに動画による映像情報提供も可能となり、現在のCATVやインターネットと同等以上の高品質・高機能なサービスが可能となるであろう。
携帯端末の進化、移動体通信の高速化は、ウェアラブル・コンピュータのような新しい個人情報ツールの形態を実現するかもしれない。
これは、超小型のコンピユータとディスプレイを身に付け、いつでもどこでも情報端末として利用できるようにするもので、家庭や社会のあらゆるところにコンピユータが存在するユビキダス・コンピューティングの対極にあるコンセプトである。
この情報端末は、テレビ電話であり、CATVであり、電子メールやデータベースを使えるインターネット端末であり、ウォークマンであり、アプリケーションをマウントしたパソコンとなるであろう。
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