1994年、歴史的事件が起きた。
わが国最大の電話会社のNTTと世界のパソコンOSを押さえる米マイクロソフト社が、NTTのネットワーク技術と、マイクロソフト社のソフトウェア技術を融合させて、顧客によりよい動画付き衛星サイト・サービスの実現に向けて協力し合うことに合意したと発表したのだ。
マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長は、北京での2日間の日程を終えて成田に到着、その足で東京都内での児島仁NTT社長との共同記者会見に臨み、「DVD-ROM、電話回線、無線通信の技術、将来の広帯域ネットワークなどを使ったデジタル情報の流通は、今後ビジネスと社会のさまざまな局面において、大きなインパクトと、人々への大きな恩恵をもたらすものと確信しています。マイクロソフトは、こうした情報流通基盤を実現するため、テクノロジーとインフラストラクチャーの開発にきわめて積極的に取り組んでいるNTTと協力できることを大変喜ばしく思う」とのコメントを発表した。
この訪中の直前にビル・ゲイツ会長は、携帯電話サービス大手のマッコー・セルラー社と共同出資で2001年までに840基もの通信衛星を打ち上げ、全世界をカバーする携帯通信サービスを開始するとの壮大なプロジェクトをぶちあげ、関係者を驚かせたばかりだ。
では、両社の提携の内容はどうなのか。
これは、通信回線を利用した動画付き衛星サイト流通サービスと、パソコンなどオフィス機器と連携したファクシミリ・サービスの二つの分野で技術協力を行うというものだ。
動画付き衛星サイト流通サービスでは、まずDVD-ROMを活用し、NTTの通信回線を使って、ユーザーが欲しいソフトウェアだけを入手できるようにする。
将来はDVD-ROMを使わないサービスに発展させていく計画で、ユーザーはパソコン・ショップなどに行かなくても、通信回線を通じて好きなソフトを手にすることができるようになる。
このような動画付き衛星サイト情報流通サービスは、ソフトウェアなど情報のユーザーにとっては、情報の入手が手軽になると同時に、ソフト会社など情報の提供者にとっては、情報の使用権を管理できるようになるなど、情報の流通の多様化、活性化に役立つ。
そのため、動画付き衛星サイト情報流通サービスでは、情報について、その内容と使用する権利を分離して流通させる。
例えば、当初の情報配布手段としてはDVD-ROMなどが想定される。
ソフトウェアなど情報のユーザーは、その情報の主要部分が暗号化して記録されているDVD-ROMを低価格で手に入れ、暗号化されていない部分を試したのち、その情報を利用するかどうかを決定することができる。
情報を利用したい場合は、電話などを通じて情報の使用権、つまり暗号を解くカギを入手して、情報を使用するという形をとる。
このため両社は、情報をネットワークで配布する対話性、即時性の高い情報流通サービスを開発するとともに、パソコン・ソフト、ゲーム・ソフト、音楽・映像ソフト、出版ソフトなどに対しオープンな形で幅広くこのサービスへの参加者を求め、よりよいサービスの実現を目指していくという。
また、もうひとつの目玉は、ファクシミリ通信網サービスとそれを利用する機器の利便性を向上させるため、同時に多くの人に配信できる同報通信などの多彩なサービスが可能なファクシミリ通信であるNTTの「Fネット」と、パソコン、ファクシミリなどの機器間で相互通信を可能とするためのソフトウェアであるマイクロソフト社の「マイクロソフト・アットワーク」対応のオフィス機器との連携について、協力することに合意したというもの。
これにより、同報通信などの「Fネット」サービスが、パソコンなどの各種オフィス機器から簡単に利用できるようになる。
この提携についてNTTの児島社長は、「ソフトウェア技術で世界的に有力なマイクロソフト社と力を合わせることにより、みなさんに喜んでいただけるネットワーク・サービスを提供していきたい。今回の提携は、さまざまなネットワークとさまざまな端末が有機的に結合し、ていくという動画付き衛星サイト化の大きな流れの中で、大きな一歩になる」と話した。
この提携の裏には、パソコン・ソフトから通信分野への進出を図ろうとするマイクロソフトと、通信回線の新たな利用技術などソフトウェアの面で弱いNTTとの相互補完という事情がある。
しかも両社とも、ひとつの共通のターゲットとして、動画付き衛星サイトというキーワードをもっており、この動画付き衛星サイトが両社を結びつける、糊力の役割を果した。
ワシントン州レッドモンドに本拠を置くマイクロソフトは、少年ビル・ゲイツが1975年にスタートさせたパソコン用OSの開発を目指したソフト会社。
それが93年には、売上高約三八億ドルという巨大企業に成長した。
特に、最近のOS製品である「マイクロソフト・ウインドウズ・バージョン3・1」は、世界23か国に出荷され、総数は4000万本に達している。
ところが、このマイクロソフトにもアキレス腱があった。
それが通信である。
今後の動画付き衛星サイトの世界は、これまでこのブログでもみたように通信を除いては語れない。
動画付き衛星サイト市場は、ソフトウェアと通信回線で構成されるからだ。
マイクロソフトは93年、従来OA機器とみなされていた複写機やファクシミリなどもネット
ワークで結び、相互に通信し合えるという「マイクロソフト・アットワーク」と呼ばれるソフトウェアを発表したのもそのためだ。
さらには、先のウインドウズに強力なLAN機能をもたせた本格的な三ニビット版OS「ウインドウズNT」も、通信を視野に入れたものとなっている。
しかし、これらはソフトウェアであって、実際の通信回線の運用技術、通信技術は別の問題である。
そこでマイクロソフトは、世界でもその分野で最も高いレベルにあるわが国のNTTを提携相手に選んだということができるであろう。
一方、NTTも、通信・放送の融合に代表されるように、今後の動画付き衛星サイト時代に向けての規制緩和の動きに乗り遅れると、単なる"電線屋"として取り残される危惧がある。
これはまた回線に大きな付加価値を付け得る絶好のチャンスでもある。
それにより、回線利用が増大するというまさに一石二鳥の効果をもつ。
このような両社の思惑が、この提携劇へと発展していった。
互いに、相手側のプラス面を活かし合おうということである。
NTTはこれに先立ち94年1月、米ネクステル社の戦略パートナーとなる最終契約の調印をした。
NTTの海外事業としては、タイのTT&T社に続いて二番目で、初の米国電気通信事業への参画である。
ネクステル社はアメリカ国内の大都市を中心に事業展開している移動体通信事業者で、現在、米国九大都市(ロサンゼルス、サンスランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ボストン、フィラデルフィア、ワシントン)などを中心に全米初の本格的な大容量デジタル移動通信サービスを計画しており、それによって音声やデータ通信、ページング、いわゆるボケベルなどを含む、いま最も注目を浴びている動画付き衛星サイト通信サービスの提供を目指している。
NTTでは、同社のシステム拡張の際の技術面・運用面での協力・指導を行うとともに、出資・役員派遣を行い、経営に参画するという。
わが国最大の電話会社のNTTと世界のパソコンOSを押さえる米マイクロソフト社が、NTTのネットワーク技術と、マイクロソフト社のソフトウェア技術を融合させて、顧客によりよい動画付き衛星サイト・サービスの実現に向けて協力し合うことに合意したと発表したのだ。
マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長は、北京での2日間の日程を終えて成田に到着、その足で東京都内での児島仁NTT社長との共同記者会見に臨み、「DVD-ROM、電話回線、無線通信の技術、将来の広帯域ネットワークなどを使ったデジタル情報の流通は、今後ビジネスと社会のさまざまな局面において、大きなインパクトと、人々への大きな恩恵をもたらすものと確信しています。マイクロソフトは、こうした情報流通基盤を実現するため、テクノロジーとインフラストラクチャーの開発にきわめて積極的に取り組んでいるNTTと協力できることを大変喜ばしく思う」とのコメントを発表した。
この訪中の直前にビル・ゲイツ会長は、携帯電話サービス大手のマッコー・セルラー社と共同出資で2001年までに840基もの通信衛星を打ち上げ、全世界をカバーする携帯通信サービスを開始するとの壮大なプロジェクトをぶちあげ、関係者を驚かせたばかりだ。
では、両社の提携の内容はどうなのか。
これは、通信回線を利用した動画付き衛星サイト流通サービスと、パソコンなどオフィス機器と連携したファクシミリ・サービスの二つの分野で技術協力を行うというものだ。
動画付き衛星サイト流通サービスでは、まずDVD-ROMを活用し、NTTの通信回線を使って、ユーザーが欲しいソフトウェアだけを入手できるようにする。
将来はDVD-ROMを使わないサービスに発展させていく計画で、ユーザーはパソコン・ショップなどに行かなくても、通信回線を通じて好きなソフトを手にすることができるようになる。
このような動画付き衛星サイト情報流通サービスは、ソフトウェアなど情報のユーザーにとっては、情報の入手が手軽になると同時に、ソフト会社など情報の提供者にとっては、情報の使用権を管理できるようになるなど、情報の流通の多様化、活性化に役立つ。
そのため、動画付き衛星サイト情報流通サービスでは、情報について、その内容と使用する権利を分離して流通させる。
例えば、当初の情報配布手段としてはDVD-ROMなどが想定される。
ソフトウェアなど情報のユーザーは、その情報の主要部分が暗号化して記録されているDVD-ROMを低価格で手に入れ、暗号化されていない部分を試したのち、その情報を利用するかどうかを決定することができる。
情報を利用したい場合は、電話などを通じて情報の使用権、つまり暗号を解くカギを入手して、情報を使用するという形をとる。
このため両社は、情報をネットワークで配布する対話性、即時性の高い情報流通サービスを開発するとともに、パソコン・ソフト、ゲーム・ソフト、音楽・映像ソフト、出版ソフトなどに対しオープンな形で幅広くこのサービスへの参加者を求め、よりよいサービスの実現を目指していくという。
また、もうひとつの目玉は、ファクシミリ通信網サービスとそれを利用する機器の利便性を向上させるため、同時に多くの人に配信できる同報通信などの多彩なサービスが可能なファクシミリ通信であるNTTの「Fネット」と、パソコン、ファクシミリなどの機器間で相互通信を可能とするためのソフトウェアであるマイクロソフト社の「マイクロソフト・アットワーク」対応のオフィス機器との連携について、協力することに合意したというもの。
これにより、同報通信などの「Fネット」サービスが、パソコンなどの各種オフィス機器から簡単に利用できるようになる。
この提携についてNTTの児島社長は、「ソフトウェア技術で世界的に有力なマイクロソフト社と力を合わせることにより、みなさんに喜んでいただけるネットワーク・サービスを提供していきたい。今回の提携は、さまざまなネットワークとさまざまな端末が有機的に結合し、ていくという動画付き衛星サイト化の大きな流れの中で、大きな一歩になる」と話した。
この提携の裏には、パソコン・ソフトから通信分野への進出を図ろうとするマイクロソフトと、通信回線の新たな利用技術などソフトウェアの面で弱いNTTとの相互補完という事情がある。
しかも両社とも、ひとつの共通のターゲットとして、動画付き衛星サイトというキーワードをもっており、この動画付き衛星サイトが両社を結びつける、糊力の役割を果した。
ワシントン州レッドモンドに本拠を置くマイクロソフトは、少年ビル・ゲイツが1975年にスタートさせたパソコン用OSの開発を目指したソフト会社。
それが93年には、売上高約三八億ドルという巨大企業に成長した。
特に、最近のOS製品である「マイクロソフト・ウインドウズ・バージョン3・1」は、世界23か国に出荷され、総数は4000万本に達している。
ところが、このマイクロソフトにもアキレス腱があった。
それが通信である。
今後の動画付き衛星サイトの世界は、これまでこのブログでもみたように通信を除いては語れない。
動画付き衛星サイト市場は、ソフトウェアと通信回線で構成されるからだ。
マイクロソフトは93年、従来OA機器とみなされていた複写機やファクシミリなどもネット
ワークで結び、相互に通信し合えるという「マイクロソフト・アットワーク」と呼ばれるソフトウェアを発表したのもそのためだ。
さらには、先のウインドウズに強力なLAN機能をもたせた本格的な三ニビット版OS「ウインドウズNT」も、通信を視野に入れたものとなっている。
しかし、これらはソフトウェアであって、実際の通信回線の運用技術、通信技術は別の問題である。
そこでマイクロソフトは、世界でもその分野で最も高いレベルにあるわが国のNTTを提携相手に選んだということができるであろう。
一方、NTTも、通信・放送の融合に代表されるように、今後の動画付き衛星サイト時代に向けての規制緩和の動きに乗り遅れると、単なる"電線屋"として取り残される危惧がある。
これはまた回線に大きな付加価値を付け得る絶好のチャンスでもある。
それにより、回線利用が増大するというまさに一石二鳥の効果をもつ。
このような両社の思惑が、この提携劇へと発展していった。
互いに、相手側のプラス面を活かし合おうということである。
NTTはこれに先立ち94年1月、米ネクステル社の戦略パートナーとなる最終契約の調印をした。
NTTの海外事業としては、タイのTT&T社に続いて二番目で、初の米国電気通信事業への参画である。
ネクステル社はアメリカ国内の大都市を中心に事業展開している移動体通信事業者で、現在、米国九大都市(ロサンゼルス、サンスランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ボストン、フィラデルフィア、ワシントン)などを中心に全米初の本格的な大容量デジタル移動通信サービスを計画しており、それによって音声やデータ通信、ページング、いわゆるボケベルなどを含む、いま最も注目を浴びている動画付き衛星サイト通信サービスの提供を目指している。
NTTでは、同社のシステム拡張の際の技術面・運用面での協力・指導を行うとともに、出資・役員派遣を行い、経営に参画するという。