2010年11月アーカイブ

2005/02/15

 ■強み生かし地上波と差別化

 歴史上の人物を題材にした米国映画が日本でも人気だ。そんななか、ドキュメンタリー専門の番組供給会社「ディスカバリー・ジャパン」(東京都港区)は、映画配給会社と連携してPR活動を行うなど、認知度アップに向けた戦略を強化している。)

 制作費2百億円の米歴史大作「アレキサンダー」の試写会が、今月5日の公開に先立ち、東京都中央区の「ル テアトル銀座」で一月2十9日に開かれた。映画を上映するだけの一般的な試写会とは異なる仕掛けで、7百4十席が招待客で埋め尽くされた会場が盛り上がった。アレキサンダー研究の第一人者である森谷公俊帝京大学教授が上映前に登場し、歴史の謎を解き明かしたのだ。

 この企画を立案したディスカバリー・ジャパンの岡崎正哲(まさき)マーケティング&コミュニケーションズ部長が狙いを説明する。「歴史番組を得意とするディスカバリーを強く印象づけたかった。そこで、講演会で歴史上の人物であるアレキサンダーへの理解を深めたうえで、映画を楽しんでもらうことにしました」

 ◆映画会社と連携

 全国のケーブルテレビ局やCS(通信衛星サイト)放送向けにドキュメンタリー番組を供給する同社が試写会を開くメリットは何か。岡崎部長はこう続ける。

 「劇場公開に合わせて今月6日、映画『アレキサンダー』の舞台裏に迫る番組を放送しました。試写会は、歴史大作に関心をもつ来場者に、ディスカバリーの番組をPRする絶好の機会となりました」

 その番組とは「アレキサンダー コリン・ファレルの挑戦」。紀元前4世紀の英雄であるアレキサンダー大王を演じた2十8歳の若手俳優コリン・ファレルさんに、映画制作開始前から密着したドキュメンタリーだ。試写会では、番組のダイジェスト版を流すとともに、同社提供の「ディスカバリー・チャンネル」のPR誌を配布した。

 こうした試みは「アレキサンダー」を配給する松竹(東京都中央区)との連携によって実現した。松竹は、映画情報をディスカバリー・チャンネルの広告枠で伝えることで、「歴史が好きなディスカバリーの視聴者に映画の魅力を効果的にアピールできる」(映画宣伝室)。つまり、専門チャンネルとの相乗効果に注目したというわけだ。

 ◆硬派番組で勝負

 このほかディスカバリー・ジャパンは、歴史大作ブームを追い風に新たな構想も描いている。「"歴史上の人物"という横ぐしを通した特別編成を、検討しています」と岡崎部長。

 具体的には、特定のテーマに焦点を当てた番組を一週間連続で放送する企画だ。

 同社は、視聴率競争の激しいゴールデンタイム(午後7?十時)では歴史ドキュメンタリーなどの"硬派番組"を放送しにくい地上波テレビ局との差別化戦略の一環で、「プレミアディスカバリー」という企画を採用。例えば3月には、「古代のスーパー兵器とは何か」を探る番組(午後9時?)を7日から5日連続で流す。

 「在京民放キー局などの地上波テレビ局は、広く見てもらう方針で番組制作にあたっています。対照的にわれわれの番組は間口が狭いけれども、視聴者により深く楽しんでもらえます。なかでも歴史は、ディスカバリー・チャンネルの取材・編集力を生かせる切り口です」

 ディスカバリー・ジャパンの沼田篤良(あつよし)最高経営責任者(CEO)は専門チャンネルとしての番組制作姿勢ならではの強みをこう強調する。

 好きな番組を好きなときに視聴できる「サーバー型放送」の研究が進み、メディアが多様化に向かうなか、専門チャンネルは存在感をどこまで高められるか。同社の挑戦は、これからが本番だ。

                  ◇

 ディスカバリー・ジャパン 米ディスカバリー・コミュニケーションズが制作し世界160カ国で視聴されている自然・科学や歴史などの番組群「ディスカバリー・チャンネル」のうち、アジア向けに編成した番組を日本の放送事業者に供給している。番組は全国のケーブルテレビやCSデジタル放送などを通じて楽しめる。1997年8月設立。資本金25億円。視聴可能世帯数は昨年12月現在で、464万世帯。

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